喫煙者は病気が恐くないのか?~医療制度と日本の健康軽視の文化~
ニコチン欠乏の恐怖が病気の怖さを上回る
百害あって一理なしのタバコを吸い続ける喫煙者は、病気が怖くはないのだろうか?
・喫煙行為はあらゆる病気のリスクを上げる。
・ストレス解消にもならない。
薬物中毒によるニコチン欠乏の恐怖が病気の怖さを上回る理由はいくつか考えられる。
1.無知
単にタバコ害に対する知識がない。
ある地域の高校生の喫煙実態調査によると高校生常習喫煙者の「タバコは悪いところばかりで良いところはない」という回答は半数以下だった。
2.喫煙関連疾患の発症タイムラグ
タバコを吸い始めてすぐに重病になることはほとんどなく*1、中高年になってから病魔に襲われる。例えば、喫煙開始と肺ガン発生の間にはおよそ30年のタイムラグがある。
JTという悪の商人は、このタイムラグを利用してタバコと肺がんは無関係と主張し、国民を騙そうとした。
国民と政府にウソをついて喫煙対策を妨害するJTに抗議する 日本禁煙学会
3.保険制度に起因する健康軽視の文化
もう1つは、日本の保険制度がもたらす健康軽視の文化である。
日本の医療制度は、低く抑えられた医療費と患者による医療機関の自由選択に特徴がある。 このような制度は、気軽に病院を受診でき、病気の早期発見・早期治療に繋がるメリットがある反面、予防軽視・健康軽視の文化を作ることになりかねない。
実際、喫煙天国だった10年〜30年前の国民1人当たりの年間平均受診回数は、世界的に見て断トツに高い。また、1回当たり医療費は圧倒的に低い。
最近のデータを見てもまだ年間平均受診回数はかなり多いほうだ*2。
このような医療制度のもとでは、喫煙者が「何か具合悪くなったら医者行けばいいや」と考えるようになっても不思議ではない。一方、 医療費が払えず破産する人が続出するような医療費の高額な国では、病気の予防意識が高まる。
タバコの害による2015年度の総損失額は2兆500億円で、うち医療費は1兆2600億円である*3。喫煙者に健康の重要性を認知させ、治療に多額のコストがかかることを知らしめる必要がある。
故意に病気になった者に保険を適用すべきではない
例えば国民健康保険で病気の治療を受ける場合は、適用条件に「薬物中毒でないこと」を加えてはどうだろうか。不適用の例外は禁煙治療のみだ。健康診断時の尿検査に分析項目を加えるだけで可能になる。
埼玉県熊谷市では、10年前から毎年市内の小学4年生約1500人を対象に尿検査を実施し、受動喫煙の実態を調査している。
子供の肺に入ったニコチンは、肝臓で「コチニン」という物質に変わり、尿に排出される。尿検査でコチニンの濃度を調べれば受動喫煙の度合いがわかるというわけだ。
数値が高い子供には教育委員会から保護者に文書を送り、喫煙を見直すよう促している。この取り組みを始めてから、小学生の親の喫煙率は少しずつ低下しているという。
日々精進して健康的な生活を送る人々が、「自ら進んで病気になる喫煙者」の医療費を負担する仕組みは受け入れられない。
那智の滝